【 ふたご・つなげるプロジェクトまとめ ふたごのえほん 】

はじめに

 

 こんばんは、内田ゼミです!!

 

 皆様いかがお過ごしでしょうか?少しずつ残暑も和らぎ心地よい秋風が吹き始めましたが、季節の変わり目と言うことで体調管理にはご留意ください。

 

さて、前々回から、内田ゼミが「NPO法人つなげる」と「TOCJの田辺さん」と一緒に頭に大汗をかきながら作成したTOCを発表しております。

 

 全部で3事業分のTOCがあり、

養育者向けTOC(キキララ)

・支援者向けTOC(Eureka)

・非当事者向けTOC(ふたごのえほん)

の3つです。

 

 これまで2つのTOCを投稿致しましたが、お楽しみいただけましたでしょうか?

▼まだの方はこちらから

○養育者向けTOC

uchidazemikobe.hatenablog.com

 

支援者向けTOC

uchidazemikobe.hatenablog.com

 

 最終回なる今回は、チームふたごのえほんが担当していた多胎育児非当事者に向けたTOCとその説明を発表させていただきますので、どうぞお楽しみください!

 

 

非当事者向け事業TOC

 

TOCの説明

 

 非当事者向けのToCについて解説するにあたって、我々が作成したToCツリーのおおまかな構成を説明します。

 

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 まず法人のすべての事業の出発点である構造的な社会問題、システミック・プロブレムについての考察をツリーの一番下に展開しています。システミック・プロブレムと多胎育児の現状がどのようなフローでつながっているのか、その関係性を当事者と非当事者それぞれの立場から分析してみました。

 現状が理解できたら、次に周知事業を通して働きかけていく非当事者への介入と、それによって生じる非当事者の意識の変化に関するフローをつなげています。具体的には、多胎育児が抱える問題を知らなかった非当事者が現状を知り、その問題の深刻さ、根深さに気づいた状態まで引き上げるための活動です。

 そして多胎育児の厳しい現状と問題を正しく理解した非当事者たちに、多胎育児当事者のために実生活の中で起こせる行動と、行動に移す時の心構えを提供するフローを「個人の個人的な活動」、「個人の組織的な活動」、「組織の組織的な活動」の三つの観点から説明していきます。多胎育児に対し問題意識をもった非当事者が自分たちにできること・すべきことを知り、さらに一歩踏み出す勇気を分け与えるための精神的な介入も組み込んで、非当事者が当事者に昇格するまでにできる動きを描いています。

 最後に、行動を果たし当事者となった元・非当事者が、継続的に多胎育児に関わっていくことができるよう、周知事業としての長期成果を越えた他ToCとの連携をツリーのトップに配置しました。当事者化した人々が、支援を通じて他者が喜んでくれる機会を何度も経験することで、法人の究極成果である「多胎育児支援を経て自己効力感を高める」という目標につなげていきます。

 

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 以上の構成を踏まえて、周知事業のToCツリーの下方、システミック・プロブラムから説明を始めていきます。(文責:桜河)

 

 

 

 私からは「非当事者が多胎育児の現状をしらない」から「自分の居場所がなく、身近に助けを求められず、希望を失い無力感を感じて、子供の命の誕生を喜べないママ」「感情を抑圧し、当事者意識が希薄化し、個々人が自分の声・痛み・違和感に鈍感に(なり、命の誕生が喜ばれなく)なっている社会」というシステミックプロブレムに結びつけるプロセスを説明します。

 

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 まず、現状の「非当事者が多胎育児の現状を知らない」ということは「多胎育児者と非当事者の間にはギャップが存在している」という風に言い換えることができるのではないでしょうか。結論から言えば、そこには「育児を頑張っているのに認めてもらえない vs ママが頑張っていることに気がつけない」というギャップが存在していると考えました。

 

  それぞれどういった過程でこのような認識の差を生み出しているのかを①当事者②非当事者の二つの視点から考えていきます。

 

①当事者(ママ)

 

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 ママは多胎育児をひとりきりで頑張っていると仮定します。パパが仕事で家にいない間も、子供をあやしたり外出に挑戦してみたりと、二人分の面倒を見なければならず、それぞれのママが考えられる最善の努力をしています。しかし、当事者以外にはその頑張りの過程は見えず、結果だけを評価されてしまいがちです。

 

 多胎育児の大変さをよく知らない周りからの評価は必死に子育てをする多胎ママにとっては納得のいかないものであるかもしれません。最もつらいのは、共に子育てを担っていくパパから頑張りを認めてもらえないことではないでしょうか。精神的、肉体的に疲弊したママが、「頑張ったね」「ありがとう」などの言葉を最も身近な理解者であるはずのパパからもらえず、されにそれが「ママなんだから当たり前のこと」という風に捉えられていたら。どれだけ頑張ってもパパに頑張りが伝わらないと悟ってしまったら。

 

 「もっと頑張らなくちゃいけないのかな」「私から思いを発信しても意味がないな」と、誰かに助けを求めることもできず、気持ちは自分に向かい、「頑張りを認めてもらえない」→「居場所を感じられず、希望を持てない」→「自分から発信しなくなる」→「パパがそれを当たり前に思う」→「頑張りを認めてもらえない」という負の循環が生まれ、ママはどんどん疲弊していきます。

 

 この状態は「自分の感情や意思に素直になれず、表現できない状態」であると言えます。自分の気持ちにどんどん鈍感になっていき、自分が疲弊していることに気づかない。この状況が鬱病であったり、子供の虐待であったりと目に見える問題として社会に表出しているのではないでしょうか。

 

 

②非当事者

 

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 一方、非当事者はそんなママたちに気がつくことができません。あるいは、気がついても行動を起こせる人はごくわずかだと思います。これらはなぜなのでしょうか。

 

 どうして気がつけないのか。これは、「共感ができない」からではないかと考えました。相手の気持ちや状況、苦労を想像することができない、と言い換えることができるかもしれません。自分のことに精一杯であったり、意識が別の場所を向いていたり、相手を想う、想像することができていないからこそ相手に共感することができず、結果として気がつくことができないのではないでしょうか。

 

 また、気がついても何かしらの行動が起こせないのはなぜでしょうか。これは善意を行動に変えることを阻む経験が個人にあるからではないかと考えました。困っていそうな人を見かけても「自分は本当になにかできるのか?」「声をかけたら迷惑ではないか?」などという気持ちが先行し、結局何もすることがなくその場を後にしてしまう。例えば、よく電車内で高齢の方に席を譲ったら怒られた、という声を聞くように、自分の善意は相手にとって不要なもの、望んでいないものではないかという不安です。これらの思いから人が見知らぬ誰かのために行動を起こすことを阻んでいるのではいかと考えました。

 

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 これらの「そもそも気がつかない」「気がついても行動ができない」の背景には、「私たちが自分の声に・痛みに・違和感に鈍感になっていく」社会構造があるという風に考えました。日本は個よりも集団に、全体の平均に目線を合わせた教育を行なっていました。それゆえに自分の感情は他とは違っているかもしれない、自分の中に違和感はあるけど他の子がそうなら正解なのかもしれない、などと自分の素直な感情を発露させる機会は少なくなり、自分の感情を抑圧することが当たり前になり、どんどん感情の振れ幅が小さい人が増えていったのではないかと考えています。

 

 自分の感情に鈍感になるということは、他人の感情にも気づきにくくなるということです。それゆえ、誰かの苦しみに気づきにくくなっているのではないでしょうか。

 

 社会とは、人と人とで構成された組織や集団を指します。ゆえに、システミックプロブレムは上記で説明したような個々人が集まっている社会。社会全体として「感情を抑圧し、当事者意識が希薄化し、個々人が自分の声に・痛みに・違和感に鈍感になり、命の誕生が喜べない」状態になっていると考え、これをシステミックプロブレムと定めています。

(文責:ミジンコ)

 

 

 それでは、多胎育児の現状を知らない非当事者が、新たに多胎育児について知り、その後問題意識をもつという段階へとステップアップする流れについて、説明したいと思います。

 

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 私たちは、多胎育児に関して無知である非当事者を、小・中学生、高校生、大学生、単胎のママ、パパといったように分類し、それぞれのペルソナを考慮したうえで、介入を考えました。例えば小学生が多胎育児の現状を知るためには、義務教育の一環として多胎育児に関する学習を取り入れるというアイデアが挙がりました。また、大学生に対しては、キャンパス内で幼児との接点を生む機会を作ったり、学生インターンのなかで多胎育児について考える機会を設けたりするといった介入が考えられます。

また世の中に多く存在する非当事者全体に効果的な介入として、マスメディアやSNSといった媒体の利用や、多胎育児を気軽に学べるイベント等の企画も考えられました。

 

 こうした介入を通し、多胎育児の現状を知るようになった非当事者は、次に多胎育児の現状に対して問題意識をもつことが要求されます。この多胎育児の現状を知っているという状態は、将来多胎育児をする、あるいは多胎育児に関わる自分の可能性を想像できる状態、多胎育児の問題を「自分ごと化」できている状態、単胎と多胎の育児の差があることを知り、多胎児だからこそ支援を必要としていることを理解している状態を指します。

 

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 この段階にいる非当事者が、多胎ママの悩みに共感できたり、多胎育児の問題に非当事者個人が深くかかわっていることに気づいたりといったように、新たに強い問題意識をもつようにするために、非当事者のペルソナごとに以下のような介入を考えました。例えば、大学生に対しては、多胎育児理解を目的としたビジネスコンテストを開催したり、単胎のママには、多胎ママの一日をドキュメンタリー映像やSNSを通じて、さらに知ってもらったりするといったような介入が考えられました。また非当事者に問題意識をもたせるために介入は、地域や企業、行政との連携も有効であると考えました。(文責:うた)

 

 

 さて、非当事者が多胎育児に関して問題意識を持った状態に至りました。ここから、「非当事者個人が日常の場面で多胎ママを助けるアクションを起こす」「(ピアサポ、寄付、イベント運営など)非当事者が組織的支援者として活動する」という二つの長期成果に至るまでの途中成果と介入についてご説明いたします。

 

 早速、と言いたいところですが、その前に、ここからフローが複雑化するため、先に全体像をご説明してから具体的なご説明に移りたいと思います。

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(下のフロー写真と対応する位置関係となっております。)

 

 まず、活動のインパクトの大きさや介入の違いを考慮し、非当事者を大きく「個人」と「組織」の2つに分けました。ToCにおいて、右側半分が「個人」、左側半分が「組織」に当たります。さらに「個人」に関し、支援活動の場による分割を行いました。右側のフローが①「日常的な場面での単発的な支援活動」、その左隣が、②「多胎支援組織内での継続的な支援活動」となっております。この「個人」のフローについて、後ほどそれぞれ詳しくご説明いたします。

 また、「組織」についても、フローを2分割いたしました。一つは、先ほどの②「個人の組織内での継続的支援活動」に同じです。もう一つが、一番左のフローである③「組織の組織的支援活動」です。この「組織」のフローについても後述いたします。

 

さて、全体像の整理をここまでとし、具体的にToCを見ていきます。

▼フロー写真

 

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 まず、「個人」のフローについてご説明いたします。私たちは、「非当事者が多胎育児に関して問題意識を持っている」という途中成果の上部に2つの途中成果を掲げました。「非当事者が多胎ママに対して何かしたいと思う」そして、何かしたいと思った上で、「非当事者が自分にできることとすべきことがわかる」の2つです。

 

 この2ステップを実現するにあたっての非当事者の思考を含意した介入が、右側の赤四角内にございます。この四角内の左側ができることを、右側がすべきことを認知してもらうための介入となっております。そしてその間に属するものは、できることとすべきことのどちらかを認知している非当事者向けの、両者をつなぐ媒介的な介入であります。こうした介入を通して、非当事者は「多胎ママ助けるために行動しようと決意している。」「非当事者(個人)が日常で困っていたら助けられる準備ができている。」という状態にまで至るのではないかと考えました。

 

 ここから、先ほど述べたよう、個人の支援活動が2分化されます。先に右側の日常的な支援について触れようと思います。

 

 ① 日常的な場面での単発的な支援活動 (個人)

 先ほど挙げた心的物的準備が完了した先に、私たちは「非当事者が、当事者(個人)を助けるアクションを起こす行動力がある状態」を想定いたしました。その介入としては、支援行動を起こせない原因を一緒に考えてあげたり、トラブルが起こる可能性の高いシーンを提示したりと、個人がアクションを起こすための第一歩を支援することが考えられます。

 そして、行動力を持った先に、一日多胎ママと行動する実習の支援などを通して、「非当事者(個人)が日常の場面で多胎ママを助けるアクションを起こす」という長期成果が実現されると考えました。

 

 ここまでは個人の日常的支援活動でしたが、ここから個人の「組織内での継続的な支援活動」に関するフローをご説明いたします。

 

② 多胎支援組織内での継続的な支援活動 (個人と組織の共通部)

 「非当事者が多胎ママを助けるために行動しようと決意している状態」の次に、「非当事者が身近に活躍できる組織があることを知っている」という途中成果を掲げました。その成果実現施策として、NPO法人つなげるのような多胎育児に関わる仕組みがあることを知らせることはもちろんのこと、その仕組み自体を充実させること、という介入を思案いたしました。

 

 そうして、活躍できる場を認知した非当事者に対し、ピアサポの説明会や体験会の実施に加え、参加しやすい雰囲気の歓迎会や座談会などを実施することで、「非当事者が組織支援者として活動する」という長期成果が実現できると見込まれます。

 

  ③ 組織の組織的支援活動 (組織)

 最後に、「組織的活動を行う組織」に関するフローをご説明いたします。

 多胎育児に関して問題意識を持ち、何かしたいと思っている非当事者が増えた先に、多胎ママと組織担当者が直接会話する機会確保や、組織に対する支援要請の営業活動を通して、「非当事者の組織が支援者・当事者と接点を持っている」という途中成果が実現されます。その後、個々の組織が絡む問題を可視化し、つなげると多胎育児支援に取り組む意味を具体的に提示することで「非当事者の組織が自分たちにすべきこととできることがわかる」という状態に移ります。

 

 そして、つなげると協力することで生み出すことのできる社会的価値や影響を定量化したり、多胎育児イベントに企業担当者を招待したりといった活動によって、「非当事組織が当事者に対し何か行動したいと思っている状態」という高次の成果まで実現することが可能となります。

 そして、実際に組織が行動を起こすと同時に「非当事者が組織的支援者として活動する」という長期成果が実現されると考えました。(文責:ちーたけ)

 

 

 それでは最後に、多胎育児の現状に問題意識を持ち、自分にできること・すべきことを適切に理解し心の準備もできた非当事者が、日常生活や組織活動を通して多胎ママを支援したことで「非当事者が当事者化する」という周知事業としての長期成果を達成した後の展開についてお話します。

 この話をするにあたって我々は、自分たちが担当している周知事業と養育者向け事業、および支援者向け事業のToCとの関わり合いについて考察し、以下二つの連携位置を想定しました。

 一つめは、養育者向けToCと並列する支援者向けToCの前段階です。多胎育児に関する意識が変わった結果個人や組織で実際に行動を起こした非当事者は、行動を起こした時点ですなわち支援者を考えることができます。ゆえに、そこから発展していく支援者向け事業をサポートする介入があるのではないか、と考えました。

 二つめは、養育者向け事業と支援者向け事業の各成果段階です。各事業で実施する介入において協力する企業や団体、そこに所属する人々が皆必ずしも多胎育児の現状を詳しく知っていて問題意識を持っているとはかぎりません。たまたま属している組織が多胎育児支援に協力的だから、というケースも、なくはないでしょう。そのような当事者チームに放り込まれている非当事者に多胎育児の現状を広め当事者化することで、他事業のToCをスムーズに進めることができるのではないかと考えました。

 

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 では、実際に長期成果を達成した周知事業が他事業とどのように関わっていけるのかについて説明します。個人や組織として多胎育児支援に参加し、晴れて当事者となった元・当事者たちには、自分が起こした行動が多胎ママをはじめとする養育者の役に立ったのかを知る権利があります。そこで、周知事業としては実際に助けてもらった経験のある多胎ママたちの声をアンケートのように集計して公表したり、身近なスーパーや公共施設に意見投書箱を設置するなどして支援者にフィードバックを届ける介入を行うことができます。また、手助けに対し良かった点や改善点を話し合う場を設けることで支援自体をブラッシュアップすることも考えられる。

 そうすることで、当事者の心には「良いことをした」、「世間の役に立った」、「この経験を次に活かしたい」など、再び支援者として行動を起こすきっかけが芽生え、二回、三回と支援を繰り返していきます。そうして多胎ママが喜ぶ経験を何度も積むことで、多胎支援を通じて支援者が自己効力感を蓄積しポジティブなエネルギーを社会に発信する、という支援者向け事業の長期成果に近づくサポートを施すことができるのです。(文責:桜河)

 

 

おわりに

 

 ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました!

今回の投稿をもって今期の内田ゼミの締めくくりとさせていただきます!

半年間ご覧になってくださった皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

 

  そして、半年間という短い間でしたが、一緒にTOC作成にご協力くださった「NPO法人つなげる」の中原さん、大野さん、「TOCJ」の田辺さん、本当にありがとうございました。

 何も知らなかった我々に対して温かい言葉や、思考のきっかけになるような様々なお言葉のおかげで私たちも少しは成長できたと思いますし、社会課題に対する考え方や視点が以前よりも深まったと感じています。

 

 今回の活動を踏まえて、私たちも日々努力していこうと思います!

 本当にありがとうございました!

 

 

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